認知症義母との二人生活

介護を放棄した義弟夫婦に代わって、義母を見守ることになった50代男の話です。

憔悴

義母と二人で暮らして5月6日で6か月だ。

この2か月は激動であった。義母さんは相変わらずだが、私の仕事が爆発した。義母さんと暮らして運周りが変わったのか、3年かけて種を蒔いてきたきた仕事が突然注目されYahoo!!のトップページを騒がすような事態にまでなってしまった。おかけで介護というほどのことはできず、ずいぶん義母さんには迷惑をかけた。覚えてないからいくらか気が楽だが...。

そしてピンチヒッターとして同居する要因になった娘の大学受験も無事終わり、第一志望の大学へ奇跡的にもぐりこむことができた。これも運を引いたかな。

仕事が忙しくなり、一人では回せないので義母さんの家の2階で仕事を続けるわけにもいかないし、娘の受験も終わりそろそろ次の段階かなと思っているのだが嫁が何も言ってこない。ちなみにこの6か月、嫁が実家に泊まったのは一晩だけ。このままずるずるするのもなんだし、もともとあかの他人の介護のために自分の人生を犠牲にするのはまずいよなあなどと思っていたら、義弟の登場である。

都内にマンション買って引っ越すので家においてある荷物を少しづつ持ち出したいらしい。2階の自室にいたところ義弟がやってきた。嫁が来ていたので義母さんと3人で話をすればいいかな、と顔を出さずにいたら義母さんと義弟が大バトル。仕方がないので一階に降りて義弟を見てびっくり。頭はきたないハゲ、ガリガリに痩せて皺だらけのシャツ、目に生気はない。くたびれた70の爺さんという感じである。

嫁と義母さんに手を伸ばしてきたので、蹴り飛ばしてやろうかと思ったが面倒になるかなと思い「警察呼ぶぞ!とっとと帰れ!」と追い返した。これでもローン組めるちゃんとした会社のサラリーマンである。仕事大丈夫か?

義弟が帰ったあと私が聞いていない話を嫁から聞いてびっくりした。

「マンションどこに買ったんだ?」

江東区らしい」

「豊洲かね」

「○○とかいうところみたい」

オールド江東区の地域である。

義弟夫婦は大宮のはずれにある会社から15分ほどのところに住んでいる。引っ越しで通勤時間は往復2時間は増えるだろう。仕事もせずにぷらぷらしている嫁がなぜ会社から遠くの縁もゆかりもないマンションに引っ越したがるのか?都心のタワーマンションならわからなくもないが、オールド江東区である。考えられるのはひとつ、義弟嫁は義弟と1秒でも長く離れていたいのではないか。義弟の憔悴が腑に落ちた。