認知症義母との二人生活

介護を放棄した義弟夫婦に代わって、義母を見守ることになった50代男の話です。

正月から日常へ

年末は2階で生活できるようにするなどバタバタしたが、正月は静かなものだった。

義母さんは元旦もゆっくり7時頃目を覚ましてきたので、

「あけましておめでとうございます!」というと

「あら知らなかった!お正月なの?!」の一言から一年が始まった。

昨夜、紅白を見たことなど忘れてしまうのだ。

しかし初日に向かって柏手をうち拝んでいるのがまた面白い。

 

私は正月はいつも実家だったので、生まれて初めて雑煮を作り、母からもらったおせちを盛り付けて簡単な正月料理とした。

三が日は来客などもありあっという間に過ぎ、明けて5日から私も仕事、義母さんもデイサービスへ行き出した。以前は「デイサービスは何もできない年寄りの行くところ、だから私は大丈夫!ディサービスには行かないで家にいる。」などと言っていたのだが言わなくなった。

 

年明け第2週の土曜日、義弟夫婦が残した荷物を片付けに来た。業者を呼びピアノはレンタル倉庫に入れるというので置いておいても良いと言ったのに持ち出すという。

荷物は義弟が書斎として使っていた部屋に押し込み鍵をかけた。

片付けが終わったのでもう当分用はないということで、義弟夫婦が1階の義母さんのところに挨拶にきた。

「かたずけが終わったので行くね、そのうちまた....」と義弟がいうと、

「おねがいします!おねがいします!」と頭をさげる義母さん。

「元気でね」か「やっぱりここで暮らして」というかと思ったら

「おねがいします....二度とこの家に来ないでください!」

唖然とする義弟が「でもこの家は半分俺の....」といいかけると、

「あなた長男でしょ!!こそこそ出て行くような真似をして!死んだお父さんになんていうの!」

呆然とする義弟をさえぎるように義弟嫁が「お母さん、興奮すると体に悪いから...」といいながら義弟を引きずってって帰って行った。

ディサービスに行かないと言わなくなったのは、この覚悟を決めたからだったのだ。

この日の翌日、私は同居後初めて雪山へ遊びに出かけた。